パーキー・パットな日々

大学生・書店バイト・うだつのあがらない日々・主に趣味の話を

こんなに面白いのに何で読まないの? 老人と宇宙(そら)

f:id:PerkyPat:20151215040819j:plain

タイトルだけは知ってた。タイトル見た感じで、ヘミングウェイ老人と海を意識してるんだろうなってのは思ってて、ちょっと食わず嫌いしてたんだけど(もちろんヘミングウェイのも名作だよ?)いざ古本屋で見つけた時に表紙を見て、あれ?思ってたんと違う。。。っていうか原題は全然ヘミングウェイじゃねーじゃん!

後ろのあらすじを読んでまたびっくり。75歳のおじいちゃんが志願して宇宙へ赴き、コロニー防衛軍として戦うってんだから。オイオイオイ、と。

祖父祖母と同居してておじいちゃんおばあちゃん大好きっ子の私としては、そんな老体に鞭打たせるような暴挙は悲しくなってくるっていうか、ちょうどうちのおじいちゃんが75くらいなのね。絶対無理。

 

そんなこんなあって読み始めた本作。珍しく一気読み。

何せ素直に面白い。笑わせ方もすごく好みで、小説で声をあげて笑ったのって何年振りだよってくらい。クソッタレのくだりとかほんと爆笑でした。

簡単に説明していきますけど、そもそもコロニー防衛軍は75歳以上しか募集していませんでした。それには理由があって、そんでもってその募集に応募が殺到しているのも、そこに入隊すれば「若返る」ことが出来るから。年齢を重ねて身体も衰え、あとは死ぬのを待つばかり、なんてご老人方が再び若さを取り戻すためにこぞって入隊していたのでした。みんなは「身体を新しく換装」するもんだとばかり思っていたんだけど、そうじゃなくて意識を新しい身体に載せ替えて脳みそも身体も丸っと別の(ただし自分の遺伝子からつくられたクローンを改良したもの)ものにしてしまうという大胆不敵なものだった。若返った老人たち(しかも、皆もとよりイケメンや美女に改造されてる)がまず最初にしたことといえば、そう、セックス。若返ってから入隊するまでのわずかな時間、誰彼構わずサルのようにセックスに耽るのでした。

そんでもって主人公のジョンも晴れて若い身体を手に入れて入隊。宇宙の植民地を巡って、様々な宇宙人たちと人類のために戦うことになる。

スマートブラッドという彼らの新しい身体に流れる便利な血、自由にライフル弾、榴弾、火炎放射なんかを切り替えて発射できるという銃(これはちょっとやりすぎな気がした)、意識中で会話やデータのやりとりを行える脳内デバイス等、未来戦争ガジェットもバッチリ押さえてあるし、出てくる宇宙人もバラエティに富んでいる。個人的にはあまりにも主人公属性が強すぎる気がしたけど、まあこのへんはしょうがないよね。ラノベだもん。SFなんてラノベですよ?だからみんなもっと気軽に読んでイイんだよ。

各所で言われている通り、ハインラインの「宇宙の戦士」の影響を色濃く受けているらしい。せっかくだからハインラインのそれもすぐに読んでいろいろ対比させながら書きたかったけど、持ってたはずのあのダサカッコイイ表紙が本棚ひっくり返しても見当たらず、ちょっと断念。どこにやったかな。。。

ハインラインは確か実際の戦争経験を基にして書いたんだっけ?その点こちらは戦争は経験しておらず(作者さんの写真見る限りまだ若い)、経験によって書かれたものを基にして描かれているので、経験の二次創作とも呼ぶべきものであり、当然エンターテイメント性が前面に出てくる。だって僕らは映画やゲームでしか戦争を知らないんだもん。

読む前に想像していた、戦場に老人の断末魔が響き渡るというような悲壮感も無し(これはこれで読んでみたい気もするが。笑)で、周りにも安心してオススメできるよ。小難しい話も無し!SF読みたいって言ったらいきなりディアスポラをオススメしてくるようなヤツとは友達やめるべきだよ。

敢えて言うなら、宇宙に出た人類がどうやって自分たちを相対化するのか、身体を新しくするという行為にあたってのアイデンティティの問題とかあるけど、サラッと触れるだけだし、頭空っぽにして読んでも問題なし。あと無条件で友好を唱える平和バカが宇宙人に惨殺されるシーンがあるので、戦争反対!9条!とかいう友達に読ませるのはあんまりオススメしない。

続編があるのでもちろん買って読むつもり。